今回から6回にわたって「職場における人権」を考えます。

手法としては、①米国の職場事情と②日本での立法と判例動向を参考に、あなたの職場の“将来の人権リスク”を探ります。

リストラ、セクハラ、パワハラ、コンプラ、LGBT・・・・と日本では曖昧だった概念が米語で明確に定義され、我々の職場に入ってきて、経営者や管理職を慌てさせています。この流れは、戦後の法律体系、技術、企業、文化におけるアメリカの絶大な影響を考えれば当然です。

“日本の5年先のリスクを予測”する手法として、米国事情研究は理がある手法だと思っています。

今回は、第一回として、企業の採用面接でのタブーを、米国での私の実体験から探ります。日本と異なり、通年採用、職務記述書での募集であり、終身雇用・年功序列・異動転勤・定年退職はありませんので、本当にドライです。

米国の採用面接では、以下の質問は全てタブー、又はイエローカードになります。

  •    年齢確認を意図するもの
  •     出身地、家族について
  •     結婚の有無、婚姻暦について
  •     人種確認を意図するもの
  •     犯罪歴・逮捕暦について
  •     応募者が提出する履歴書(顔写真なし)の内容確認を超える質問
  •     身長・体重や健康状態について
  •     肌の色について
  •     写真の添付・提出義務について
  •     団体・組織・組合等への所属について
  •     宗教や信条について
  •     性別、LGBT

すなわち、求める労働力(職務記述書)の選考である採用面接で、合理性がある確認、質問は(1)学歴(何を学んだか?、大学名は不要)と、(2)職歴(どの様な職種を経験したか?、会社名は不要)だけ、ということです。

私も、米国現地子会社に赴任中は、多くの採用面接に同席しましたが、質問するたびに人事担当者から注意を受けていました。職務記述書や業務経歴・能力以外の日本では『当然であたり前で、採用するために必要な、面接の緊張を和らげる質問』がことごとくNGとなるのです。

日本でも近年、「XXハラスメント」、「XXマイノリティー人権」、が社会的規範となりつつある中、企業の不十分な対応が問われる事件も多発しています。

今後、国際化の進展の中、日本の企業においても、女性、外国人、障害者、LGBT等のマイノリティーへの対応ばかりか、「日本国憲法で保障している人権」への配慮に欠けた企業は、ブラックのレッテルを貼られ、優秀な人材が採用できなくなるリスクがあります。

【日本国憲法条文、抜粋】

第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

「あなたは、女性ですか?」は、アカウンティング希望のボーイッシュな米国公認会計士有資格者の黒人に私が尋ねて、同席する人事マネージャーから注意を受けた質問です。女性であることが必須となる特殊な業務以外では、『性別』は採用基準として合理性が無いばかりか、昨今のLGBTに象徴される人権への侵害問題を引き起こす危険(訴訟リスク)さえあったのです。

 

次回、人権ワンポイント講座Vol.2は、視点を変えて、働き方改革の中、管理職が日々直面するテーマとして、「休暇取得の時季変更権」の動向を取り上げます。①企業の正常な事業運営の権利、と②従業員の休暇取得の権利、という「権利の天秤」が昨今はどちらに傾いているのか、を米国の休暇取得における職場事情、と日本での時季変更権訴訟での近年判例、から探っていきます。