1.運転資金の重要性

 経営者の方が大変気にしていることの一つに、運転資金の確保があります。
「月末までに支払金額確保できるか」
「予定通り入金されるか」
などの日常の資金だけでなく、
「プロジェクトを行いたいが、途中で資金が不足しないか」
「官公庁と取引したいが、支払いが年度末になるのでそれまで資金が足りるか」
など、悩みの種はつきません。ひとつ間違えると黒字倒産になるのですから、資金繰りに慎重になるのは当然と言えます。

2.運転資金の捻出

 今までの運転資金をつくる手段の一つとして、売上を計上(検収)した時点で、手形割引やファクタリングなどを行い資金化する方法があります。しかし、先に材料を購入しなければならない製造業や工賃を支払う建設業では、契約から売上を計上までの期間についてはやはり自分で資金負担をしなければなりません。問題は半分しか解決していないのです。
 その契約から売上を計上するまでの運転資金を確保するための手段としてPOファイナンスが出てきたのです。

図1 POファイナンスの仕組み

3.POファイナンスとは

 POファイナンスの「PO」とはPurchese Order、つまり注文書を意味しています。 
お客様からの注文書を元にして資金調達を行う新しい資金調達手法です。この手法を取り扱っているのはTranzax株式会社とその提携金融機関※1です。
 発注企業の協力の元、Tranzax社が注文書を電子記録債権にします。その電子記録債権を担保に提携している金融機関から資金調達ができるシステムです。
 このサービスを使えば、従来は担保にならなかった注文書を元に審査を受けることができ、契約した時点で運転資金を確保しやすくなるので資金繰りの心配が無くなりますね。また、受注段階で金融機関が担保融資を行う仕組みのため、ファクタリングや手形割引より早く、かつ借入元は銀行や信用金庫などの金融機関なので資金調達コストも安いです。
 最近大型受注が来て資金繰りが不安だとか、仕入れの際に前払いが必要など、売上回収と仕入れによる支出のギャップの期間が長い企業にぴったりな仕組みと言えます。
 しかも実は発注企業側にも管理の手間が省けるというメリットがあるのです。(図 2 関係企業のメリット)

図2 関係企業のメリット

 一方でメリットばかりではなく、お金の出し手が金融機関なので、審査が必ずしも早いとは限りません。明日明後日の資金繰りに困っているという状況になる前に、余裕をもって相談しておく必要がありそうです。また、発注企業の協力が必要なため、メリット等を踏まえ、説明を行う必要があります。交渉の方法などの相談はTranzax社が相談に乗ってくれるようです。

4.POファイナンスの今後

 知名度が低いPOファイナンスですが、実は国のお墨付きなのです。
 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下ものづくり補助金と略)公募要領に、運転資金確保のためのつなぎ融資としてPOファイナンスが明記されています。

図3 平成30年度補正ものづくり補助金2次公募要領 P37より抜粋

 また、POファイナンスはTranzax社が行っていますが、国内唯一の非銀行系電子債権記録機関として国から認定を受けています。
 ものづくり補助金でPOファイナンスを利用する場合、注文書の代わりに交付決定通知書を持って資金調達が可能です。この場合発注企業となる国※2は既に承認しておりますので、後は自社の審査のみとなります。
 日本ではまだ知名度の低いPOファイナンスですが、アメリカでは既に主流となっています。
 運転資金の確保に悩んでいる経営者の皆さん、新たな資金調達の手法としてPOファイナンスの活用を考えてみませんか。

※1提携金融機関は商工組合中央金庫及び横浜銀行・広島銀行などの大手地銀や城南信用金庫・西武信用金庫・朝日信用金庫などの信用金庫です。
※2発注企業となる国とは、補助金の交付主体である全国中小企業団体中央会です。

(執筆者プロフィール)

 福田 幸俊
成蹊大学卒業後、東証一部上場商社の西華産業株式会社にて発電、製鐵、飲料などの機械・プラントの営業を第一線で手掛ける。営業でありながら同時に技術系資格も複数有し、技術の分かる営業として定評を得ていた。
 2019年YF経営コンサルタントを設立し、代表に就任。現在は各地で経営相談を受けながら創業支援、販路拡大、経営計画作成、資金調達などを行っている。
 専門学校東京国際ビジネスカレッジ 非常勤講師(経営学、組織論)
 独立行政法人中小企業基盤整備機構 新市場開拓コーディネーター