さまざまなビジネスのフレームワークが世の中にありますよね。今回はこの中から経営分析に役立つビジネスフレームワークを3つ紹介いたします。いずれも幅広い視点で自社を理解することができるフレームワークです。経営者の方、中小企業診断士の方を含め、ぜひ読んでいただければ幸いです。それでは、以下に記載します。

1.3C分析

3C分析は、Company(自社)、Competitor(競合)、Customer(顧客・市場)の3つの「C」で分析するフレームワークです。自社だけでなく、競合の状況や、顧客・市場のニーズも踏まえて分析します。今回は、家具業界の市場規模推移(2016年現在)を図1に、O社とN社の業績推移(2015年現在)を図2に示しました。O社(自社)の業績が停滞し、市場規模が減少している中で、N社がどれだけ伸びているか一目瞭然ですよね。

図 1 家具小売業市場規模推移

出展: 平成28年経済センサス‐活動調査 (http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/hyo.html)

図 2 O社(自社)とN社(競合)比較

事例企業の有価証券報告書より筆者作表

O社(自社)としては、家具小売市場が厳しい環境にある中で、競合のN社はどういう取り組みをして、何が効果的だったのかを分析・深堀し、自社の対策と比較しながら進むべき道を決めます。3C分析をすれば、自社だけでは見えなかった市場規模推移と競合の売上推移を自社の業績と比較することで、新たな気づきを得ることができます。今回は3C分析の説明が目的のため、詳細は記載しませんが、O社としてはN社(競合)が好調だからといって、その真似をすればいいというだけではなく、自社の強みを把握したうえで方向性を決める必要があります(もちろん、強みを活かせれば真似もOKです)。3C分析のうちの外的要因を踏まえつつ自社を深堀する分析が次のSWOT分析です。

2.SWOT分析

SWOT分析(図3)は中小企業診断士がとても良く使用するフレームワークです。Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つの視点で見るフレームワークです。さらに大きい視点でみると、内部環境(強み・弱み)、外部環境(機会・脅威)の2つの視点でみることもできます。またそれぞれを組み合わせて行うクロスSWOT分析(図4)もあります。内部環境では強みを伸ばしていくのか、弱みを克服するのかが重要ですし、外部環境ではチャンスがあれば活かし、脅威があれば対策が必要です。個人的には弱みを克服するよりも、強みを活かすことが大事だと考えています。その理由は、「隣の芝は青く見える」という言葉にあるように、自社よりも他社の強みにフォーカスしがちですが、自社の強みを再認識することが重要と考えるからです。

SWOT分析は企業だけではなく、個人にも使用できます。いきなりですが、「自分の強みは何ですか?」と聞かれてすぐに答えが出る人は相当な強みを持っていると思います。答えが出てこない方でも、他人の目には見えているものもありますので、ぜひ周りの方々にご自分の強みについて聞いてみてください。企業に話を戻すと、自社の強みが最大の武器になり、さらに自社の強みに合致する市場ニーズがあれば、かなり競合に対して優位になります。自社の強みと市場機会を活かすことができれば、成功する確率がグンとあがります。まずは自社の強みを把握するところからはじめましょう。

図3、図4を使用して自社(自分)のSWOT分析をしてみてください。

図3 SWOT分析
図4 クロスSWOT分析

3.5フォース

5フォースは「業界内で働く力」と「それを取り巻く4つの力」を表します。この分析は3C分析よりもさらに大きな視点で、業界を取り巻く環境を分析します。図5を見ていただければ分かるように、自社がいる業界には、さまざまな力が働いています。売り手、買い手、新規参入者、代替品があります。

仮に自社が自動車製造業とします。仕入先は部品メーカー、販売先は自動車販売ディーラーではなく消費者と仮定します。すると部品メーカーがもし、1社しかなかったらどうでしょう。仕入れ価格の主導権は、仕入先が持って、自社は交渉力がないですよね。また消費者が無限にいて、業界内の競合が少なければ販売価格の主導権は自社が持てます。さらに参入障壁が高ければ業界は安泰です。しかし、ここで気をつけないといけないのは新規参入と代替品です。新規参入で言えば現在自動車業界では電気自動車が台頭してきています。顧客ニーズをとらえて、もし電気自動車が普及すれば、競合対象が増えて今の業界は大変厳しいものになります。代替品でいえば、若者の自動車離れを背景に、自動車保有率が下がり、バスやタクシーなどの交通機関の需要が上がることで、販売台数が減少し競争が厳しくなる可能性もあります。他の業界の例で言えば、レコードがCDに置き換わって、さらにはスマホで音楽を聞くようになったことや、フィルムカメラがデジカメになって、さらにはこちらもスマホに変わったなどさまざまなことが起きています(※一部の方を除く)。

自社がいる業界がどういう業界なのか、参入障壁が高いのか低いのか、仕入先に力があるのかどうなのか、販売先はどうなのか、代替品の脅威はあるのかなど広い視点で自社がいる業界をみてください。

図5 5フォース分析

4.最後に

これまでに3つのフレームワークをご紹介いたしました。どれも使えるフレームワークだと思いますが、全てに共通して言えるのは、幅広い視点持ちましょうということではないでしょうか。ぜひご参考にしていただければ幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。


執筆者 林原昇平 中小企業診断士 経営管理指導士2級