「中小企業が日経新聞やNHK、そして、先生の古巣、テレビ東京に取り上げてもらうのは、やはり難しいものでしょうか?」

このようなご相談を中小企業の経営者の方から、頂くことがあります。
私はテレビ東京に入社し、約10年に渡り、「ワールド・ビジネスサテライト」や「ガイアの夜明け」をディレクターとして、創ってきました。その経験から「中小企業が有名マスコミに取り上げられるのは、決して難しいことではない」と断言できます。
が、そのためのポイントを抑えた動きができている中小企業は、極めて少ないというのが実情です。

今回は、中小企業が有名マスコミに取り上げられるために抑えるべきポイントを、わかりやすく解説したいと思います。

ステップ1: アピールするものを決める

マスコミに働きかける中小企業が、最もよく犯してしまう過ちがあります。
それは、「広告とニュースの違いをわかっていない」ということです。有名メディアほど、この区分けは厳密です。

広告であれば、自社の訴えたい内容をアピールすれば良いかもしれません。ですが、それはニュースではないのです。ニュース性のないものは、メディアの側からすると「広告費を払ってくだされば、広告枠で取り上げます」という扱いになります。

では、ニュースとは何なのでしょうか。社会に起きている変化を伝える行為、それがニュースなのです。それゆえ、取材する側からすると、取り上げる対象は、社会の変化を象徴するものでなくてはなりません。つまり、有名マスコミへのアピールポイントをつくるためには、まず、自社の製品やサービスが、「社会のなかで」どのような意味を持っているのかを整理したうえで、アピールポイントを構築する必要があります。この「社会のなかで」ということが、極めて重要なのです。たとえば「少子高齢化」、「地方創生」、「働き方改革」といった、世の中の変化に沿ってアピールすることができれば、掲載の確率は一気に跳ね上がるはずです。

ステップ2: プレスリリースを書く

アピールポイントを決めたら、次は、マスコミに的確に伝えなくてはいけません。
最も効果的に、そして安価に伝えられる手段が、プレスリリースです。

プレスリリースを執筆する際にも、ほとんどの中小企業が陥ってしまう罠があります。それは、プレスリリースをあたかもチラシのように書いてしまうということです。売り込みたい気持ちが強すぎるがゆえに、過激な煽り文句を連発、あるいは「最高の」、「ありえないほどの」といった、抽象的な美辞麗句を多用してしまうのです。

プレスリリースとは購買を直接働きかけるものではなく、自社の取り組みを社会に知ってもらうためのメッセージという大前提があります。それゆえ、冷静な筆致で書かなくては、メッセージの内容自体の信憑性に関わります。インターネットを使えば、多くの企業のプレスリリースを簡単に見ることができます。自社と同業で、広報活動に慣れた上場企業のものを参考にして、ぜひ、執筆に挑戦してみてください。

ステップ3: 送る時期とメディアを決める

最後にプレスリリースを送る時期と、ターゲットとなるメディアを決めます。
送る時期では中小企業にとって避けた方が望ましい時期と、逆に狙い目の時期があります。

最も避けた方が良いのは、年末年始と4月上旬です。年末は各メディアで「ヒット商品番付」など、その年を振り返る記事が目白押しです。年始も同様に「この1年を予測する」という類の記事が溢れることになります。つまり、中小企業の活動に割かれる紙面や放送枠が、ほとんど残っていない時期なのです。
反対に最も狙い目なのは、ゴールデンウィークです。大型連休には大企業や政治の動きは止まります。この時期は、日々のニュースを伝えるだけでは、紙面や放送枠が、埋まらないのです。ですので、中小企業はこの時期を狙ってプレスリリースを打つと、掲載確率が格段に高まります。

そして、いよいよ狙うメディアにプレスリリースを送ります。
「とにかく、数多くのメディアに送りたい」ということであれば、有料のプレスリリース配信サービスを使うという方法があります。「共同通信PRワイヤー」といったサービスを使えば、数万円で2,000以上の媒体に送ることができます。
「狙いたいメディアは2、3に絞られている」ということであれば、自分で直接、メールかFAXで送ることもできます。送付先は「情報提供先」として、その媒体のサイトを見れば出ていることがあります。出ていない場合でも、その媒体を取り扱っている企業の代表電話にかければ、教えてくれるはずです。

信頼できる専門家に依頼すれば、より高い確率で掲載を狙えます。
ですが、自分の力だけでも、決して無理ではありません。ぜひ、挑戦してみてください。

プロフィール:

下矢 一良(しもや いちろう)
テレビ東京に入社し、「WBS」、「ガイアの夜明け」を制作。その後、ソフトバンク、東芝へ。ネットメディア分野で5つの新規事業を立ち上げる。「ソフトバンク・アワード受賞」。テレビ東京で培った、中小企業のアピールポイントを構築するノウハウ。そして、ソフトバンクなどで実践してきた、ネットの力で効率的に伝えるノウハウ。これらの手法を体系化し、集客や人材採用において、中小企業を支援するため、独立。早大院 理工学研究科卒。