進化するスーパーマーケットにおけるPOSレジの役割と変遷

1.流通小売業界の変遷

 スーパーマーケットに代表される流通小売業界では、この40年の間に業界再編が繰り返され、時代の流れとともにITシステムを導入し、売上拡大に向けた努力を重ねてきました。

図表1 流通小売業界の変遷

出典:商業界「販売革新2019年3月号」の記事をもとに作成

 時代とともに進化してきたスーパーマーケットのITシステムの中でも、消費者が買い物をした際に必ず通るPOSレジについて、その役割と変遷を解説します。

2.POSレジの役割

 そもそもPOSとは「Point Of Sale」の略称で、販売時点管理を行うことが目的です。販売時点管理とは、よく売れている商品(売れ筋商品)とあまり売れていない商品(死に筋商品)の販売状況をリアルタイムに把握して、在庫管理や売上分析を効率的に行うことを狙いとしています。

 高度成長期から安定成長期にかけて消費も活発となり、スーパーマーケットでの客数や客単価も大幅に伸びたことが伺えます。その際に発生した、「顧客が長蛇の列をつくってPOSレジを待つ」という問題を解決するために、POSレジの形態も大きく変わりました。

3.POSレジの変遷

(1)2人制レジ

 POSレジの待ち時間を解消するために、当時1人で行っていたPOSレジ操作を2人で行う「2人制レジ」が1985年に登場しました。

 特徴は、レジに商品を通す商品登録のみを行う従業員(チェッカー)と、レジに支払代金を入力する支払精算のみを行う従業員(キャッシャー)に操作を分けてPOSレジ作業時間を短縮するものです。1人でPOSレジ操作を行っていた場合と比較すると約半分の作業時間となりました。

 

図表2 2人制レジのイメージ

(2)セルフレジ

 店舗の人材不足を解消するために、従業員ではなく顧客自身がPOSレジ操作を行う「セルフレジ」が2003年に登場しました。

 特徴は、商品登録から支払精算までの操作を、すべて顧客自身が行うというものです。不慣れな顧客も多いため、操作間違いなどがあった場合のサポートを行う従業員(アテンダント)が常駐しています。

図表3 セルフレジのイメージ

(3)セミセルフレジ

 上述のセルフレジは、商品登録から支払精算までのPOSレジ操作をすべて顧客自身が行いますが、商品に付いているバーコードをレジに登録する操作は面倒なことから、操作に混乱してクレームになる、商品登録せずに持ち去るというトラブルが発生しやすいです。

 この不便さを解消するシステムとして、2010年に「セミセルフレジ」が登場しました。

 特徴は、商品登録を従業員が行い、支払精算を顧客が精算機にて行うというものです。顧客は、銀行のATMを操作する感覚で精算機での支払精算を行うことができます。

図表4 セミセルフレジのイメージ

(4)セルフスキャン

 新型コロナウイルスの影響から人との接触機会を避けるために、POSレジに並ばなくても買い物が行える「セルフスキャン」が登場しました。

 特徴は、顧客が買い物をしながら自ら商品登録を行うというものであり、使い方のイメージは下記のとおりです。

① 店内入口でセルフスキャン用の貸出スマートフォンを手に取りカートに設置する。
② 買い物かごに商品を入れる際に、貸出スマートフォンで商品を登録する。
③ 買い物終了時、精算機に貸出スマートフォンで登録した商品情報を連携する。
④ 精算機にて買上金額を確認し、支払精算を行う。

図表5 セルフスキャンのイメージ

4.最後に

 筆者自身、30年以上にわたりPOSレジ開発に携わってきました。今思えば、時代の変化とともに進化してきたスーパーマーケットのニーズに応えるべく、POSレジ開発に励んできたように感じます。

 新型コロナウイルスにより、消費者の生活様式そのものが変わるという時代に突入しました。この大きな変化に、「ネットスーパー」(注1)と呼ばれる、POSレジを通らない非対面・非接触での買い物手段が増加傾向にあります。さらに「Amazon Go Grocery」(注2)などの、POSレジを使わないスーパーも出現しています。

 ただし、店舗での買い物がなくならない限りPOSレジは必要だと考えています。店舗では棚に商品を陳列して販売しますが、販売状況に応じて棚の商品を補充し品切れを防止するなど、店舗での売上管理、在庫管理は必須業務です。この管理を行うためにもPOSレジは欠かせません。POSレジを使わないスーパーであっても、売上管理や在庫管理をクラウド上で処理しているだけであり、POSレジとしての仕組みは実在しています。

 最新ニーズに応じたPOSレジが、その姿形を変えてでも活用され続けることを切に願っています。

注1:ネットスーパーとは、食品や日用品などの購入において、インターネットを使って注文し、自宅に配送してもらうサービスです。

注2:Amazon Go Grocery(アマゾン・ゴー・グロサリー)とは、米アマゾン・ドット・コムがオープンしたPOSレジ無しの食品スーパーです。Amazon Goアプリで表示したQRコードを店の入口のゲートにかざして入店し、店内で買い物だけを行って店を出る運用で、決済はクレジットカード等による後払いとなります。

吉川 和明
中小企業診断士