AI(人工知能)ブームの到来と中小企業診断士の役割

■AI(人工知能)ブームの到来

「AIを活用した顧客分析」、「会話型AIによる問い合わせ対応自動化」、最近では、「新卒採用にAIを導入しエントリーシートの確認時間を削減」といったニュースが報じられています(https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2017/20170529_01/)。毎日のように、「AI」に関する記事を目にするように、我々の生活の中でAI(人工知能)がますます身近な存在になってきました。

■AIは人間の仕事を奪うのか

最近目にした記事で印象的だったものをご紹介します。三井住友フィナンシャルグループは、今後3年間で三井住友銀行の各支店で行っている事務作業を本店に集約し、AIなどを使って効率化、約4千人を新たな事業部門に再配置する、と報じられています(http://www.sankei.com/economy/news/170601/ecn1706010002-n1.html)。事務作業の効率化という意味では、何もAIに限らず、従来のITを導入する目的の一つとしてもあったわけですが、これによって数千人の人員が配置転換をされるということが印象的でした。

現在は、大企業での導入や実証実験の開始といったニュースが目立ちますが、中小企業の出AI活用事例も出てきています。ブレイン社が開発したBakeryScan(ベーカリースキャン)は、パン屋さんのためのPOSレジシステムです。レジ横のカメラでトレイ上のパンを撮影し、画像認識の技術を用いることで、瞬時にレジ入力を完了します(http://bakeryscan.com/index.html)。もう一つ、「AIアナリスト」は、Webサイトのアクセス解析にAIを用いるもので、改善方針や重要ポイントを解説してくれるサービスです(https://wacul.co.jp/service/)。Webサイトのアクセス数によりますが、月額4万円から利用することができます。このようなサービスをうまく活用することで、業務効率化や人材不足への一助とすることができるでしょう。

■AIが得意なこと/不得意なこと

ところで、AIといったとき、どのようなものを想像するでしょうか。ある企業が提供するプロダクトを想像する方もいれば、SF映画に出てくるもの、高機能なロボットを想像する方もいらっしゃると思います。実は、AIの定義は研究者によっても意見が分かれるところで、明確な定義が存在するわけではありません。したがって、我々一人一人がどのようにとらえ、これを活用していくのか、を考えることが重要です。一つの視点として、得意なこと/不得意なことを考えてみましょう。

AIが得意なこととして、大量に処理すること、高速に処理すること、24時間続けること、といったことがあげられます。一方で、何もないところから問いをたてること、ビジョンを描くこと、といったことはAIの苦手な領域です。したがって、目的地を人間が設定し、AIが実行を担う、といったように、人間とAIが補完し合うことが重要です。何でもできる万能かつ汎用的なAIは、まだ存在しません。我々は、AIが得意なこと・できることを理解したうえで、これを使いこなすことが大切です。
参考:https://newspicks.com/news/2148068/body/

■AI時代における中小企業診断士の役割

もう一つ、事例を紹介したいと思います。配送業務の効率化を目的とし、AIを活用した配送ルートを最適化する事例があります。ヤマト運輸では、タブレットでいくつかの条件を設定すると、最適ルートをナビゲートする機能が導入されています(http://diamond.jp/articles/-/132219)。これには批判的な見方として、効率性だけではなく、接客などの対応も含めて、ドライバーが総合的に判断をすべきではないか、という意見もあるようです。

AIは万能ではないと述べた通り、AIを活用した際の業務プロセスをどのように設計するか、というのは人間が検討すべき領域です。AIを用いて何か予測をする場合、100%の精度を求めるのではなく、人手での運用対応も含めて、コスト・効果を総合的に判断する必要があります。ヤマト運輸の事例でもあった、効率をどこまで求めるか、顧客満足度を高めるためのサービスをどこまで含めるか、どのようにバランスをとるのかということは、経営者の想い(=ビジョン)にもよるところでしょう。我々中小企業診断士は、経営者の想いを的確にとらえ、最適な業務プロセスを設計、必要な技術を目利きし、組み合わせ、活用していくことが求められるでしょう。