手軽にできる中小小売店の売上up策(POPの有効活用)
1.厳しい中小小売店の経営環境
令和元年10月1日より消費税が8%から10%に引き上げられ、中小小売店を取り巻く経営環境は厳しさを増しております。
前回の消費税増税時(2014年4月)は個人消費が落ち込み、景気は低迷しました。今回の増税は、増税幅が2%であることや軽減税率制度の導入、政府の景気対策等により、前回ほどの消費の落ち込みはないのではという専門家の意見もありますが、中小小売店にとって厳しい状況であることに変わりはありません。最低賃金の引上げも年率3%程度が近年続いており、経営を圧迫する要因となっています。
そこで本コラムではコストが余りかからず、手軽に取り組める売上up策として、POPの有効活用について考えてみたいと思います。
2.POPとは何? その役割や重要性
小売業に従事されている方は、皆さんご存じだとは思いますが、POPとは「Point of purchase advertising」の頭文字で、商品の陳列棚に取付されている「商品名、価格、商品特徴等が記載された表示物」のことです。
POPは「第二の販売員」とも呼ばれ、販売員の代わりに商品の特徴や価格を顧客に無言で説明することにより販売を促進します。人手不足が叫ばれて久しい昨今、POPは以前にも増して大切な役割を担い、効果的なPOPは重要な販促手段の一つであると考えられます。
3.まずはお客様に立ち止まっていただく
売場にたくさんの商品が並んでいても、お客様に立ち止まっていただかなければ購買につながりません。消費者の購買行動のプロセスとして、AIDMAの法則があります。(※A:attention注意、I:interest興味、D:desire欲求、M:memory記憶、A:action行動)
お客様の「注意」を引くようなPOPで立ち寄り率を高め、「興味」を持っていただく必要があります。POPのサイズ、文字、配色等に配慮しながらセールスポイントやキャッチコピーで注意を引き、立ち止まっていただくことで、その後の購買の可能性が高まります。
4.客単価の向上を目指す
売上は、客数×客単価の式で表されます。POPは、来店されたお客様に、いかに多くの金額でお買い物をしていただくかという客単価の向上に、より大きく寄与します。
客単価は、商品単価×買い上げ点数に分解できます。作成するPOPが商品単価を上げるためなのか、買い上げ点数を増やすためなのかを意識して作るとより効果的です。
(1)商品単価を上げるには(アップセル)
高品質、高機能などの高額商品であれば、その商品が持つ価値をPOPにて適切に表現し、訴求することにより、ワンランク上の高価格帯の商品購入が期待できます。
(2)買い上げ点数を増やすには(クロスセル)
目的の商品に関する関連品や、合わせて購入すると得になる商品の情報等をPOPにて表示し、ついで買いを誘い1人当たりの買い上げ点数の増加を狙います。
5.消費者の購買心理を知りPOPで表現する
購買意欲の喚起に有用な2つの用語をご紹介させていただきます。
(1)バンドワゴン効果
ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果。(出典:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」)
例)当店人気№1商品‼ おかげさまで販売実績〇〇〇〇個突破‼など
(2)スノッブ効果
他者の消費が増えるほど需要が減少する現象(他人が持っているものと同じものはほしくない)のこと。(出典:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」)
例)期間限定商品 数量限定商品 会員限定商品など
6.POP表示における留意点
商品のPRがいかに大事といえども誇大広告や不正な表示は決してあってはなりません。景品表示法の不当表示に該当しないか、普段から確認しておくことが必要です。
景品表示法の不当表示には大きく分けて以下の3つの種類があります。
(1)優良誤認表示
品質、規格、その他の内容について著しく優良であると誤認される表示のこと。合理的な根拠がない効果・性能の表示は、優良誤認表示とみなされます。
(2)有利誤認表示
価格や取引条件に関して、著しく有利であると誤認される表示のこと。価格を著しく安くみせかけるなど取引条件を著しく有利にみせかける表示は、有利誤認表示に当たります。
(3)その他誤認されるおそれのある表示
景品表示法では、優良誤認表示及び有利誤認表示のほか、一般消費者に誤認されるおそれがある表示を特に指定して、禁止しています。(内閣総理大臣が指定する不当表示。例:無果汁・無果肉の清涼飲料水などについて、無果汁・無果肉であることを明瞭に記載しない場合等による不当表示)
違反行為に対しては、措置命令と課徴金納付命令が行われます。(出典:消費者庁 「事例でわかる景品表示法」より一部引用)
7.最後に
POPを工夫し効果的にアピールすることは、購買の最後の決め手になることがあります。できるところから自店のPOPを見直し魅力的なPOP作りをされてはいかがでしょうか?
執筆者 神田文弥 中小企業診断士 1級販売士