中小企業診断士の支援を活用して補助金採択や融資につなげる!
0. はじめに
私は金融機関で30年を超える間、与信審査を行ってきました。与信審査とは、金融機関が取引先に対して融資・保証・デリバティブなどの取引を行うかどうかを判断する業務です。中小企業診断士(以下、診断士)の資格を取得し、金融と経営の専門分野を持ち活動しています。これまでに、経営革新計画や各種補助金の申請書(以下、申請書)に携わる機会をいただき、感じていることをお伝えします。読んでいただくことで、申請書の採択率の向上や金融機関からの融資につなげていただけると思います。
お伝えしたいこと
- 環境分析と活動領域の分析が充実している申請書は、承認される傾向にある
- 診断士による申請書の支援は、環境分析と活動領域の分析を充実させる
- 事業性評価が充実している申請書は、融資や支援を受けやすい
- 診断士による申請書の支援は、事業性評価を充実させる
1. 環境分析と活動領域の分析が充実している申請書は、承認される傾向にある
承認された申請書、または承認されるだろう申請書は、環境分析と活動領域の分析が充実しています。環境分析は内部環境分析と外部環境分析に分けることができます。内部環境分析とは事業者が持つ強みや弱み、外部環境分析は事業を行ううえの機会や脅威です。その中でも事業を成功させるためには、事業者の持つ強みを事業の機会に投入することが重要です。
事業者の強みは、以下の項目が考えられます。
- 独自性や他社比の強みを持っている
- 入賞・受賞歴がある
- 顧客の声がある
申請書の審査員の立場になって考えてみましょう。飲食店であれば、シェフの専門分野や得意料理の紹介に加えて、コンテストでの入賞・受賞歴が申請書に書かれていれば、審査員のイメージがわきやすくなります。また、その店のファンやお勧めの料理に関しての声も、審査員のイメージが増します。
活動領域の分析とは、事業を行う際に商品・サービスを提供する業種の広さや、ターゲット市場とする地域の広さを設定することです。
活動領域を分析するときには、以下の項目が重要になります。
- 業種の適切な広さ
- 地域の適切な広さ
- データの新しさ
自社の経営資源(人・物・金)を効果的に活用するためには、適切な分野や広さの絞り込みが必要となります。
新たに日本料理の飲食店を開店する場合、どの程度提供する料理や品目を絞りこむのか、ターゲットとする顧客は近隣を主とするのか、遠方からも呼び込むのか。それらの市場分析はどの時点のものなのか、最近の状況を反映したものであれば顧客のニーズ分析がより的確に行われています。
申請書を作成する際は、事業者の強みと活動領域を十分に分析すること、加えてその検証を行うことが、事業の成功の可能性を示すことになるため承認につながります。
2. 診断士による申請書の支援は、環境分析と活動領域の分析を充実させる
経営の専門家である診断士の支援を受けることにより、申請書や融資の採択率が高まります。診断士は申請書の内容面と形式面の両方を支援することができ、申請書を充実させることができます。
申請書の内容面では、事業者の強みをより的確に引き出します。強みそのものだけでなく、その特徴や強みを生み出す背景の分析も重要です。事業者が認識していない強みを引き出し、分かりやすい具体的な説明にします。また、活動領域の分析であれば、事業者の強みや特徴を活かしたうえで、ターゲットとする新規市場の選定や、規模や成長性において適切な分析を支援します。
申請書の形式面では、強みや活動領域において、言語化による説明に加えて、写真やイラスト、グラフや表を組み合わせることにより、読み手の理解度を高めるお手伝いをします。これにより、申請書の採択率を高めることにつながります。
3. 事業性評価が充実している申請書は、融資や支援を受けやすい
事業性評価が充実している申請書は、金融機関からの融資や融資の提案につながります。金融庁は事業性評価を、「企業訪問や経営相談等を通じて情報を収集し、事業の内容や成長可能性などを適切に評価すること」としています。
事業性評価の内容が高まると、金融機関から以下の提案が行われる可能性が高まります。
- 中期・長期の融資
- 担保や保証に頼らない融資
- 既存の金融機関からの融資提案
- 新規の金融機関からの融資提案
金融機関は融資を行う際には返済能力を重視します。そのため、事業者が現在の事業を持続することに加えて、「未来の姿」が予見できることは、金融機関からの融資につながります。
企業は金融機関に対して決算書や試算表を提出しますが、それらは「過去の姿」です。多くの企業はここまでの情報に留まっています。担保や保証という「現在の姿」に留まらず、事業性評価により「未来の姿」を把握してもらうことが、融資につながる可能性を高めます。
4. 診断士による申請書の支援は、事業性評価を充実させる
診断士が申請書の作成を支援することによって、その事業者が行う事業性評価を充実させることができます。診断士は以下の能力や経験を駆使して事業者を支援します。
- 経営者に対するコンサルティング能力
- 経営計画に基づく将来の事業キャッシュフロー
- 把握内容の言語化、経営計画の事業機会や脅威を踏まえた検証
充実した事業性評価とは、事業者の経営分析や将来の事業計画を指します。これらは事業者の実態把握に役立ち、金融機関にとって申請書を評価するうえでの重要な情報になります。診断士によって事業性評価を充実させることで、金融機関からの融資や、融資の提案を受けやすくなる理由がそこにあります。
5. まとめ
診断士が支援することにより申請書の採択率の向上や、金融機関からの融資の機会が高まります。それは、診断士が事業者の強みや活動領域を的確に分析し、充実した事業性の評価ができるためです。これにより、申請書の作成に診断士に相談することは重要な選択肢の一つになります。
伊藤英幸
中小企業診断士/証券アナリスト/米国MBA