企業内診断士からの飛躍について
1.はじめに
私はリース会社の財務部門に勤める企業内診断士です。資金計画の作成や資金調達が主な仕事であり、普段は他社診断をする機会はありません。診断士登録は2019年に行いましたので、企業内診断士として三年目となります。
私が企業内診断士としてどのように活動してきたかを振り返りたいと思います。
2.中小企業診断士資格の取得理由
私が中小企業診断士の資格取得を目指した当初の理由は、中小企業診断士としての知識を自社での仕事に役立てたいと思ったからです。一次試験で求められる中小企業診断士としての知識の習得は経営層向け資料の作成やプレゼンなどの際に非常に役立つものでした。しかし、二次試験では中小企業が直面する経営課題を事例から紐解き、解決策を提示するという診断能力が求められました。二次試験の勉強を通じて、中小企業診断士の使命は様々な企業が抱える経営課題の解決策を経営者に寄り添ってともに考えることであると強く意識するようになりました。また、その意識は、実務補習で実際に経営者にお会いし、経営者の抱える経営課題に触れることでより強いものとなりました。
そんな私が企業内診断士として自社での仕事を行う上で意識していることをお話ししたいと思います。
3.大企業における各組織の役割
私が所属するリース会社は従業員1,000名を超える大企業に当たりますが、組織は業務毎に細分化されており、最小単位が各業務担当となります。各業務担当の責任者は、その担当業務の実行責任を負っています。ここでいう実行責任とは、その組織で負っている利益目標や経営目標を達成する(実行する)責任という意味で、どうやって利益目標ないし経営目標を達成するかという方法の検討や施策の内容についても各業務担当で企画します。各業務担当が企画した施策の承認行為(意思決定)は施策の重要性に応じて取締役会や代表取締役、上位組織長などの会社組織が行います。
つまり、各業務担当の責任者は、その業務を行う事業体の経営者としての役割が求められます。
4.自組織における資金業務の責任者の役割
私は資金業務を担う担当の責任者で、私を含めた7名体制で資金業務に当たっています。資金担当の主な役割は、年間資金計画を作成し、必要な資金を調達することです。また、それに付随する業務として、日々の資金繰りや、金融機関との折衝、資金の送金入金処理、借入金の管理、決算処理なども行っています。
資金担当の責任者が抱える経営課題は、金利面だけでなく人的稼働などの運用コストも含めた低コストで安定した資金調達を継続して行うことです。
資金担当の責任者として日々、この経営課題と向き合っていますが、具体的な施策のアイデア出しや、限られた人的リソースで実行可能な施策の取捨選択、今後の人的リソースの確保と育成などをどのように行っていくかを悩みながら取り組んでいます。
5.自組織における企業内診断士の役割
そこで、企業内診断士としてのもう一人の私の出番です。
診断士としての知見を活かし、できる限り客観的な視点に立って、経営者としての私の考えや判断に問題がないか検証する作業を行います。
経営者としての私は悩みながら資金担当の目標達成のために様々なアイデアを出し、責任者としてそのアイデアを推し進めようとします。それを企業内診断士としての私が、他のアイデアとの比較検証を行い、また必要に応じて部下や上司、関連部署へのヒアリングなどを行うことでアイデアがスムーズに社内で承認されるようにサポートを行います。
今回、このコラムを執筆するに際して改めて自社での最近の行動を振り返ってみたところ、資金担当の責任者としての私を企業内診断士としての私がサポートするという行動を無意識に行っていることに気が付きました。この無意識のサポート行動を自己コンサルティングと呼ぶことにしますが、この自己コンサルティングを行うことでアイデアが洗練され、上位者からスムーズに承認されるようになりました。
私がこのように自己コンサルティングができるようになったのは、中小企業診断士の使命が経営課題の解決策を経営者に寄り添って考えることであると意識するようになったことが大きいように思います。
6.今後について
今は自己コンサルティングが診断士活動の中心ですが、今後は少しずつ診断士としての知見を他社のコンサルティングに役立てていきたいと思っています。
この度、みんプロ塾第8期生として他社診断の方法を学ぶ機会を得ました。みんプロ塾での学びを、私以外の経営者の経営課題の解決に少しでも役立てていきたいと思っています。その結果、企業内診断士から飛躍できるのではないかと考えています。
以上
廣瀬 祥士
中小企業診断士