人権ワンポイント講座 Vol.6 ダイバーシティ

「ダイバーシティを、企業変革(Restyle)の契機に」

今回は、人権ワンポイント講座の最終回として、職場に迎えるマイノリティ、異質な仲間との軋轢、交流から芽生える新たな発想、このダイバーシティのエネルギーを、企業変革(Restyle)の契機にするためのTIPSを一緒に考えましょう。

先ずは、Ⅰ.変革のマネージメントを復習します。次に、Ⅱ.ダイバーシティについて整理し、Ⅲ.ダイバーシティ(特に女性、高齢者、外国人の採用)を活用した中小企業変革の事例と私(向井)の職場におけるRestyle実践をご紹介します。

バックナンバー

■人権ワンポイント講座 Vol.1 採用面接でのタブー
■人権ワンポイント講座 Vol.2 有給休暇申請への時季変更権
■人権ワンポイント講座 Vol.3 LGBTへの対応
■人権ワンポイント講座 Vol.4 営業秘密の守り方
■人権ワンポイント講座 Vol.5 外国人労働者

Ⅰ.変革のマネージメント

変革を成し遂げるためには、ただやみくもに取り組むのではなく「手順」が必要です。先ずは定説となっている、経営学者ジョン・コッターが提唱した、変革のプロセスとつまずきの石を復習しておきましょう。

1.組織変革の8段階のプロセス

(1)危機意識を高める
危機意識を高め、問題や機会を「何とかしなければ」という話し合いが始まるようにする。

(2)変革推進チームをつくる
変革を主導できるだけの適正と権限を備えた適切な人材を集める。

(3)適切なビジョンをつくる
変革を主導するような心躍るビジョンを掲げる。

《優れたビジョンの6つの特徴》
・目に見えやすい(イメージが目に浮かぶくらい明確であること)
・待望される(そのイメージを迎えたいと心から思えること)
・実現可能である(現実的、実現可能だと思えるイメージであること)
・方向を示す(意思決定をする際の判断基準となること)
・柔軟である(いかなる状況においても行動を制限しないこと)
・コミュニケートしやすい(5分以内で説明することができること)

(4)変革のビジョンを周知徹底する
変革によって何を目指すのか、明確で確信が持て、しかも心に響くメッセージを伝える。

(5)従業員の自発的な行動を促す
ビジョンや戦略に心から賛同する人たちの障害になっているものを取り除く。

(6)短期的な成果を生む
短期間で成果を上げて、皮肉や悲観論、懐疑的見方を封じ込める。これで変革に勢いがつく。

(7)さらに変革を進める
ビジョンが実現するまで、変革の波を次々と起こす。危機意識の低下を容認しない。

(8)変革を根付かせる
行動を企業文化に根づかせることによって、伝統の力で過去に引き戻されるのを防ぎ、新たなやり方を続ける。研修や昇進人事、感情の力を利用して、集団の規範や価値観を強化する。

2.変革が失敗に終わる主な8つの原因「つまずきの石」

内向な企業文化
官僚主義
社内派閥
相互の信頼感の欠如
不活発なチームワーク
社内外に対しての傲慢な態度
中間管理層のリーダーシップの欠如
不確実に対する恐れ

Ⅱ.ダイバーシティとは

ダイバーシティ(Diversity)とは、直訳すれば「多様性」となります。

ビジネスシーンにおいては、労働人口の減少や様々なニーズに対応するために、女性や高齢者や外国人の雇用を増やす「ダイバーシティ経営」という言い回しが使われています。

元々はアメリカで始まったダイバーシティ経営は、女性やマイノリティの積極的な採用や、差別のない処遇を実現するために広がった取組でが、日本においては、人種、宗教等の多様性ではなく、性別や、ワークスタイル、障害者採用などで使われることが多い傾向があります。

ここでは、ダイバーシティ経営(Diversity Management)を、個人や集団間に存在するさまざまな違い、すなわち「多様性」を競争優位の源泉として生かすために文化や制度、プログラム、プラクティスなどの組織全体を変革しようとするマネジメントアプローチのこと、と定義しておきます。

経済産業省から公表されている、ダイバーシティ経営関連の資料を一覧しておきます。

出典;ダイバーシティ・マネジメント、経済産業省

出典;ダイバーシティ経営、経済産業省

出典;ダイバーシティ経営、経済産業省

Ⅲ.活用事例・活動紹介

ダイバーシティ(特に女性、高齢者、外国人の採用)を活用した中小企業変革事例と、私(向井)の職場でのRestyle実践活動をご紹介します。

1.「新・ダイバーシティ経営企業100選」

経済産業省は、ダイバーシティ推進を経営成果に結びつけている中小企業の先進的な取組を広く紹介し、経済産業大臣表彰を実施しています。

★ポイントは、ベアリング部品製造の中小企業として、外国人の採用と女性技能の向上を経営課題としてとらえて、生産性向上につなげたことです。

★ポイントは、印刷・広告を手掛ける中小企業として、女性(結果的に男性も)の働く環境を改善、勤務形態を多様化することで「働き方改革」を推進し、新事業の拡大につなげたことです。

2.私(向井)の、職場における草の根的Restyle実践活動のご紹介

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最後になりますが、企業はゴーイングコンサーン(going concern)であり、継続性と持続性が求められ、その為に「常に経営環境の変化を先取して、変化していく」ことが必須となります。

ダイバーシティは時代の流れであり、その大河の中で、変化を先取して『企業変革(Restyle)の契機とする』意識が経営には必要です。

向井 実、中小企業診断士、行政書士、NECグループ勤務