1.はじめに

 現在、中小企業や小規模事業者を対象に、国の施策としてさまざまな補助金支援が行われております。
 今回の記事では、補助金の一つである、ものづくり補助金を活用したことが過去に一度もない中小企業や小規模事業者の企業の社長向けに、ものづくり補助金とは何か、またその活用メリットについて簡単ですがご紹介させていただきます。
 数ある国の補助金の中より、ものづくり補助金をご紹介させていただく理由として、次の理由があります。実際、中小企業や小規模事業者の社長との会話を通じ、国からの補助金の上限額が比較的魅力的である事。また、事業計画策定においても、新たな事業を考える必要のある事業再構築補助金に比べ考えやすい、という声が多数あったこともあり、この補助金を紹介させていただくことにしました。

2.ものづくり補助金とは

 中小企業や小規模事業者を対象とした補助金で、自社の革新的な技術・商業・サービスの生産性を向上させるための設備投資に対し、国が補助金による支援を行う制度です。
 昨今のものづくり補助金の出願枠としては、通常枠に加え、回復賃金上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠、グローバル市場開拓枠などさまざまな種類があります。
 また、補助金額は、申請枠や企業規模によっても補助額や補助率などが異なっており、特例を利用すれば最大5,000万円、補助率は1/2もしくは1/3となっており、大規模・高額な設備への投資に活用できます。(参照:図表1)

図表1:ものづくり補助金概要

出典:中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r4/r4_mono.pdf?0804

3.ものづくり補助金の活用割合

 昨今、ものづくり補助金は多くの中小企業や小規模事業者に馴染みのある補助金となってきています。
 一方、中小企業庁サイト掲載のデータによると、利用したことがある企業数は、小規模事業者62.5%、中規模企業で69.2%であり、30%~40%ほどの企業が利用したことがないという回答となっています。(参照:図表2)

図表2:支援メニューの直近3年間の利用実績・理解度・認知度
(企業規模別)

出典:中小企業庁サイト 
資料:(株)野村総合研究所「中小企業の経営課題と公的支援ニーズに関するアンケート」より

 中小企業庁サイト掲載のデータによると、利用したことがない企業の理由として最も多い回答としては、利用する際の手続きの煩雑性を回答する企業が多い結果となっています。
 中小企業支援策でもあるものづくり補助金の活用を面倒と感じる中小企業や小規模事業者の社長がいる事が理解できます。(参照:図表3)
 実際、私も補助金支援として、中小製造業の社長と会話した際、「日常の業務で多忙な中、公募要領を読み解き、申請におけるルールを理解するのが難しく、手間がかかるので面倒だ」という声を聞いたことが多々ありました。

図表3:今後中小支援策を利用したいと思わない理由

出典:中小企業庁サイト
資料:(株)野村総合研究所「中小企業の経営課題と公的支援ニーズに関するアンケート」より

4.昨今のものづくり補助金の採択率

 ものづくり補助金は、計画書をなんとなく作成し、申請すれば誰でも合格できるものではありません。
 公募要領の必須項目にあたる内容を記載し、また、この補助金活用による設備投資等を行うことで、生産性の改善が図られ、3~5年の自社の中長期における経営状況が向上する計画を立案する必要があります。

 では、実際申請件数に対する採択率の推移を見てみましょう。
 昨今の採択率は、50%以上の採択となっております。最も高い採択率の時で、62.1%もの採択率となっており、決して低い数値ではない状況です。(参照:図表4)

図表4:ものづくり補助金の申請件数と採択率の推移

出典:ものづくり補助金総合サイト

5.ものづくり補助金を活用するメリット

 では、ものづくり補助金を活用し採択されると、どんなメリットが中小企業や小規模事業者側にあるかというと、下記のようなメリットがあります。

  • 融資と違い、調達した資金の返済の必要がない
  • 設備の新規導入が図れることで、生産性向上による労働環境の改善、売上向上やコスト削減にもつながる
  • 生産性向上により、余剰時間が捻出されることで、新たな事業の検討、挑戦をすることが可能となる
  • 綿密な事業計画を立てる機会となり、事業の方向性の明確化や、事業課題の整理も可能となる

 私が支援した中小企業や小規模事業者の声として次のような声が実際にありました。
 「融資の場合は、金融機関に借りた資金は返却が必要だが、補助金は返却なしで設備投資の資金繰りとして活用可能である」、「事業計画等、多忙を理由に策定したことがない。
 しかし、この機に策定することで、設備投資導入により、自社の生産面での効率化の可視化ができる」、「今後の事業の方向性なども考える良い機会となった」などです。

 一方、事業計画書を立案するのは確かに手間のかかる作業ではありますが、上記顧客の声にもあるように、自社の中長期の事業計画が明確化されることで、事業戦略や生産計画、ターゲット顧客へのアプローチの仕方などを考える良い機会となり、是非チャレンジしていただきたいと思います。

6.おわりに

 今回はものづくり補助金に関しての簡単なご紹介でありましたが、次のような公募要領概要版のサイトもありますので、是非ご覧いただければと思います。この資料を読むことで、概要の理解が深まると思います。
※サイトはこちら

 さらに、詳細な内容を把握したい場合は、ものづくり補助金総合サイト(https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html)に掲載のある公募要領を参考していただくことにより、詳細な申請の流れ、申請に必要な書類、申請におけるルールなどを把握していただくことができます。

 「3.ものづくり補助金の活用割合」の箇所でも述べさせていただきましたが、申請ルールの理解や手続きの煩雑性などが、この補助金申請において申請から遠のいてしまうことも事実です。そのため自社だけでは、事業計画書の作成が困難であったり、公募要領の内容で理解が難しい場合は、商工会・商工会議所の窓口相談や、金融機関の紹介による中小企業診断士等の支援を得ることができます。 
 これによりこの補助金に対する理解が深められ、また、事業計画書を一緒に作成することもできます。多くの中小企業や小規模事業者と伴走して、中小企業診断士などが事業計画書策定の支援をしています。

 自社の生産性向上を図るための設備投資等の導入を検討する際、資金調達の一つの有効な手段として活用し、小規模事業者・中規模事業者の皆さまのビジネスの加速につながることを願っております。

奈良 誠
中小企業診断士