1.はじめに

近年、ものづくり現場における急激な高度化が進んでいます。日々の製品の開発・改良や、製品品質に直結する原材料の評価が以前と比べ難しくなってきている、といったご意見を伺うことが増えてきました。さらには、高度化だけではなく、併せてスピードも要求される時代となってきています。
このような場面では、往々にして社内の設備、リソースを活用するだけでは解決できないことがあり、従って何らかの外部リソースの活用が求められることとなります。

2.地域の公設試験研究機関利用のメリット

1.のような状況において、該当する外部リソースとしては様々なものがあります。中でも有力、かつ身近な外部リソースとして、地域の公設試験研究機関の利用を挙げることができます。公設試験研究機関は、全国各都道府県に1か所以上設けられ、○○県産業技術センター、工業技術センターという名称で、製造技法の検討や評価、分析のための様々な機器が整備されています。また、技術職員が常駐し、主に地域中小企業を対象に技術支援、情報の提供等を行っています。他にも農業試験場、水産試験場など、各都道府県において地域の特色を生かした様々な機関が設けられています。
このような地域の公設試験研究機関を利用するメリットとしては、以下の3つが代表的です。

1)安価に利用可能
⇒使用する機器によっては、数百円/1時間といったコストで利用することが可能です。

2)多様な設備・機器を選択可能
⇒全国の機関を対象に、最新鋭のものも含め様々な機器を利用できます。

3)様々な技術的相談も可能
⇒各施設の技術職員が様々な技術的相談にも応じています。

1)の利用の際には、評価、分析を依頼して結果を得るいわゆる「依頼試験」、自身で機器を借用し使用するといったようないくつかの方法が用意されています。

3.全国に充実した設備、充実した探索手段

これらの機関は各都道府県の管轄で設置されていることから、毎年各都道府県毎で新規設備の導入や更新が行われています。従いまして、各種積層プリンタといったような最新の製造、評価、分析のための機器が利用可能となっています。各企業独自でこのような機器の導入、更新を行うためのコスト、労力を考えますと、これら施設の活用がいかに大きな効果を生み出す可能性があるかお分かりいただけるものと思います。
また、各都道府県別ですので、結果として数多くの機関に多様な機器があることから検索が難しいと思われるかもしれませんが、複数の検索手段が用意されています。以下に3つほど御紹介させていただきます。

1)全国鉱工業公設試験研究機関保有機器・研究者情報検索システム(経済産業省HP)
http://www.meti.go.jp/kousetsushi/top

全国の機関に設置されている機器(登録されているもののみ)について、機種名までシステム上で判別できるようになっています。技術革新が目覚ましい分野での機器の選択にも有用です。

(経済産業省HPより)

2)公設試験研究機関 人間生活工学機器データベースサイト(DHuLE:デューレ)
生活関連分野に向けた商品開発において評価、数値化が難しい人間工学・生理計測関連の機器や情報を提供するサイトです。
https://www.dhule.jp/index.html

3)首都圏テクノナレッジ・フリーウェイ(TKF)
https://tkm.iri-tokyo.jp/index.html

首都圏5か所の公設試験研究機関の機器や技術、セミナーなど様々な情報に対し、一括してアクセスすることを可能としたサイトです。
機器探索に対しては1)のように全国を対象としたシステムが提供されるようになり利便性が一段と向上しています。また、2)のようにテーマを絞った検索手段や、3)のように地域限定でも多様な情報を含めて検索可能なシステムも用意されるなど、多様な用途に対応するようになってきています。

4.最後に

ご紹介してきました各地の公的試験研究機関では、地域毎の特色を生かし医療分野、航空分野への参入支援、IoTの利活用やCNF(セルロースナノファイバー)、ファインバブルといった先端材料、技術に関する情報の提供なども各機関で行われています。自社の問題解決だけでなく、今後の技術探索においても利用を検討してみては如何でしょうか?

参考
経済産業省ニュースリリース
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160404001/20160404001.html
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターHP
https://www.iri-tokyo.jp/

執筆者
鳥居 経芳
(一社)東京都中小企業診断士協会中央支部所属