私は新卒入社以来、40年余り勤めた会社の65歳定年退職を間近に控えた企業内診断士です。今は心身の態勢を整えて、次のステップに進む時期だと考えています。
 定年退職時に限らず、日常の生活において誰しも未知の世界に足を踏み入れる際には、最初の第一歩をどうすべきか迷うことはあると思います。そこで、企業人としての節目において、「新たな行動」をとることの意義について考えてみました。

 何事においても、「新たな行動」には必ず新たなリスクが伴います。
 ここで言う「新たな行動」は、自分で経験したことのない何か新しいことに取組む行動を指します。
 一例として、学校卒業後、十数年間継続勤務した管理職サラリーマンが慣れた職場を離れて初めて新しい職業に転職する、という行動を考えてみましょう。
 この場合、新しい職業で本人の力が発揮されるかもしれませんが、転職先の職場での良好な人間関係構築が難しい場合もあります。
 何より転職先でこれまでの経験や習得したビジネススキルを活かすことができず、本人がすっかり自信を失ってしまうこともあるかもしれません。

 しかしながら「新たな行動をしない」ことにも大きなリスクがあります。
 そのリスクとは、上記の例で言えば、新天地で大きく飛躍し、本人でさえ予期しない成果や成功を得るせっかくの機会を逃してしまうリスクです。更に「新たな行動をしない」現状維持の選択は、本人のキャリアにおいていわゆるマンネリやジリ貧に陥ってしまう可能性もあります。
 リスクを避けたように見える現状維持行動にも、実は機会損失という大きなリスクが隠されています。

 このようにみてくると、自分の心の中にあった「退職後も心身ともに活発な状態を維持したい」という願望に対する対処法が見えてきました。
 実は私は現在、中小企業診断士(以下、診断士)資格休止中の身です。
 そこで今春、この状態から一歩踏み出す行動としてみんプロ塾の門をたたきました。資格回復後のプランは未定ですが、まず「新たな行動」をとったのです。
 現在この行動のおかげで、診断士に必要なスキルを学び続ける機会を得ており、今後の生き方を考えるうえでの道筋が見えつつあります。そして何よりもこの素晴らしい診断士のコミュニティに参加することで、多方面で活躍する多くの専門家の方々とのつながりを築く機会を得られたことを、大変嬉しく思っています。
 先入観にとらわれずに、やってみて初めて分かった、という経験は誰にでもあることではないかと思いますが、まさにそれを実感しています。

 ここまでは、ひとりの企業内診断士のつぶやきです。
 最後に、「新たな行動」の重要性の観点から、中小企業経営者に贈るささやかなメッセージを考えてみました。
 新分野への事業展開を検討している若手経営者の背中を押すような、診断士からのエールです。

 「競争社会に身を置く経営者には、企業の存続と成長のために「新たな行動」が常に求められます。そうした行動には新たなリスクがつきものであり、リスクから逃れることはできません。最も恐れるべきは、不作為によって生じるリスクです。経営者においては勇気を持って決断し、失敗を恐れず果敢に行動することが大切です。動くか、動かないのか、迷ったときには先ず動く!その先には、大きなチャンスと可能性があるからです」

 新規事業への参入は、会社にとっての重要事項であり、十分な戦略・計画をもって取り組むべきです。
 予測されるリスクに対しては可能な限り周到な準備が望まれますが、何事も事前に完璧な手当てをすることは難しく、新規事業への取組は尻込みしがちです。しかし、始めてみることで、自社が認識していなかった課題や、強みが見えてくる場合もあります。
 経営者は新規事業に取り組む価値を、まずこうした発見に見出すことが大切なのではないでしょうか。
 つまり「新たな行動」を進める過程で起きるさまざまな事象を、ポジティブな考え方で受止めることができれば、「新たな行動」をとることは、決して会社にとってマイナスにはならないと考えます。
 始めた限りは後戻りすべきでない、ということをお伝えしたいのではありません。ケースによって朝令暮改は大いに結構、ただ「新たな行動」は、当然のことながら、まず行動することから始まります。
 この当たり前のことの実践が重要であると考え、作ったメッセージです。

 私は、現在みんプロ塾10期生として勉強中の身です。
 みんプロ塾への入塾は私にとって「新たな行動」です。
 実際のところ、カリキュラムに沿って進められる学習内容は、診断士に求められる基礎的なスキル習得に向けての「新たな行動」の連続となっています。
 まず動く!という、精神で今後とも挑戦を続けていきたいと思います。

中小企業診断士 塩冶 浩一